私は主としてパチンコとスロットで稼いでいましたが、競馬も以前から趣味として楽しんでいました。幼少期から競馬ゲームが好きで、テレビでデュランダルの末脚(サニングデールにクビ差敗れた2004年の高松宮記念)を見て惚れ込み、競馬にのめり込んだのです。ただ、パチンコやスロットでは期待値理論をベースに利益を追求していましたが、競馬に対しては一般的な「競馬ファン」と同じようなアプローチしかできませんでした。競馬場に行きパドックを見て馬の調子を判断しようとしたり、血統を勉強して競馬場別に強い種牡馬をリストにしたり、ラップタイムを分析してレースに合っていそうな馬を探し出そうと没頭したり……。しかし、当然のことながらこれらの理論で回収率が上がることはなく、馬券収支はマイナスでした。
そんな私が最終的にたどりついたのが、馬券も期待値理論をベースに買うという手段です。「TARGET」というソフトをご存じでしょうか? TARGETはJRA-VANから配信されたデータを自分のパソコンに蓄積し、さまざまな検索を行なうことができるソフトウェアで、プロの競馬記者にもよく利用されている定番ソフトです。TARGETには過去のレースデータから条件別の回収率を調べる機能があり、この「回収率」という言葉に興味を持って私もTARGETを使い始めました。TARGETを利用して回収率の高い条件を探して馬券を買うことで以前よりも収支が向上し、データに基づく馬券理論を自分なりに突き詰めていきました。それ以降、回収率に基づくデータ派として書籍を出版したり、各所で予想を展開したり、競馬メディアの一端で活動を行ってきたわけですが、残念ながら回収率100%の壁を破るまでには至らなかったというのが現実です。


 そんな私の馬券理論が大きな転機を迎えたのは、東大の先輩から紹介されたある人との出会いからでした。その人も私と同じ期待値理論の使い手ですが、10年以上にわたって回収率100%超えを実現しており、私の目指す馬券理論の完成形に近いスタイルをすでに具現化していました。その人を見ていて面白いと感じたのは「個々の馬をまったく見ていない」ことです。競馬ファンの間ではよく「この馬は中山向きで東京は向かない」「距離短縮したらこの馬を買いたい」「調教で良いタイムが出た」といった、個々の馬がどれだけ能力を持っているか、どれだけレースの条件に合っているか等を考えて予想しますが、その人はそういった一般的な「個々の馬を見る予想」は一切せず、パターン分析で期待値が高い馬を探すという別次元からのアプローチを行なっていました。
その人の馬券理論を見て気がついたのは、競馬は結果を作る「馬」を見て予想するのではなく、オッズを作り出す「人」を見て馬券を買うのが勝つ秘訣だということです。競走馬の多くは20~30回も走れば引退してしまいますから、数年でメンバーはガラリと変わってしまいます。しかし、競馬ファンの顔ぶれはそれほど急激には変わりません。そのファンが作り出すオッズの傾向を解析することこそ、競馬に期待値理論を持ち込む唯一無二の方法だと私は確信しました。そこでその人の協力も得て、競馬ファンが作り出すオッズと競走馬の能力のバランスを解析するプログラムの開発に成功し、期待値が100%を超える買い目を導き出すことが可能になったのです。
この馬券マネジメントの特徴は、競馬をまったく知らない人でも気軽に参加していただける点にあります。過去のレース映像をどれだけ必死に見ても、血統表を穴が開くほど見つめても、それで収支がプラスになるとは限りません。努力に努力を重ねて馬券の的中率を上げても、その馬券の期待値が100%を下回っていれば「骨折り損のくたびれ儲け」に終わってしまいます。その点、馬券マネジメントではプログラムが導き出した買い目をただ買うだけですから、何の努力も競馬センスも要りません。しかもその買い目は過去の膨大なデータから導き出された、期待値100%以上の買い目なのです。
「本当に儲かるなら他人に教えたりせず、自分ひとりで買えばいいではないか」と考える方も多いでしょう。そこで次回は、私が期待値理論に基づく投資法を公開するに至った理由についてお話します。